復讐劇は苦い恋の味
そんな朋子の後ろ姿を見送りつつ、お弁当を食べ進めていく。

朋子ってば変なところで心配症だよね。たった一度、具合が悪いところに声を掛けただけなのに。

そんなことを思いつつ食べていると、きつねうどんをトレーに乗せて朋子が戻ってきた。

てっきり真正面の席に座ると思いきや、彼女は先ほど同様、私の隣に腰を下ろすと、手を合わせて食べ始めた。

「え、なんで隣?」

「別にいいじゃない。それにまだ話は終わっていないし」

え、話まだ終わってなかったの?

ギョッとする私の横で朋子はうどんを啜りながら、話の続きを始めた。


「美空がちょっと微笑めば、大抵の男はコロッといっちゃうんだから、勘違いさせないように気をつけないと」

「そんなこと言われても……」

自分では特別な感情を抱いて、仕事中患者さんに対応しているわけではないし。


「気をつけなさい! ……だって美空が勘違いして欲しい相手は、たったひとりしかいないでしょ? お見合いした素敵な彼だけだよねー」

意味ありげに話す朋子に、喉に詰まりそうになり慌ててお茶を飲み干した。
< 132 / 293 >

この作品をシェア

pagetop