復讐劇は苦い恋の味
幸せになるためには、嘘も必要……か。今の私のためだけにあるような言葉みたい。

「朋子はさ……もし、私の立場だったらどうする?」

聞いてみたくなった。

高校からの付き合いだけれど、昔からずっと一緒にいるかのように、今の私にとって彼女は特別な存在。

それに朋子は昔から恋多き女で、たくさん恋愛してきた。そして今の旦那さんと出会って結婚して、可愛い双子を出産までしている。

そんな朋子がもし私の立場だったらどうする……?

ふたりともすっかり箸は止まり、見つめ合ったまま。すると朋子は「うーん……」と唸った後、話してくれた。


「そうだな……私が美空の立場だったらもうこの際、過去のことは水に流しちゃうかな」

「えっ」

驚く私に朋子はクスリと笑った。

「だって話を聞いていると、昔とは別人みたいだし。なにより過去のことを後悔しているんでしょ? だったらもういいかな。……昔、自分を散々苦しめた分、責任取ってあなたが幸せにしてって思うかも」

実に朋子らしい考え方に、思わず笑ってしまった。
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