復讐劇は苦い恋の味
言い過ぎなんかじゃないよね、むしろもっと言って、君嶋くんと私とでは住む世界が違うってことを分からせるべきだよね。そうすれば諦めてくれるかもしれない。

落ち込む彼に畳み掛ける。


「この前のお見合いの席もそうでした。一度は行ってみたいと思うほど、私には敷居の高い場所で……。あの、私は君嶋さんとは住む世界違う人間です。外食なんて滅多にしないですし、日常生活は常に節約の毎日です。価値観が合うとは到底思えません」


遠回しにやんわりとこの縁談話を断ってみたけれど、彼に私の気持ちは伝わっただろうか。

ただジッと私を見つめる君嶋くんの表情からは、なにを思っているのかわからない。

相変わらず騒がしい店内で、彼の答えを待つ。すると君嶋くんは表情を変えず言った。

「価値観が違ったら、恋愛はできませんか?」

「……えっ?」
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