復讐劇は苦い恋の味
間髪入れず彼は続けた。


「そもそも価値観がまったく同じ人間など、出会う方が難しくないですか？　所詮家族以外、みんな他人なんですから。価値観が違って当然だと思います。……大切なのは好きな相手と出会えた後ではないですか？」

私に言い聞かせるように、彼の真剣な瞳が向けられた。


「相手のことを知って理解し合って。時にはケンカしたりぶつかりながら、ふたりだけの新しい価値観を生めばいいと思います。それが恋愛じゃないですか？」

「それは……」

言葉に詰まる。悔しいけれど、君嶋くんの言う通りだと思うから。

家族以外の人間はみんな他人。価値観がまったく同じ人間と出会える確率なんて低いに決まっている。

なにも言えずにいると彼はふわりと笑った。


「それに価値観が違う相手だからこそ、好きになると俺は思います。……自分にはないものを持っているからこそ、惹かれるのではないでしょうか」

そう、かも。……自分にないものを持っている。だからこそ人は人に惹かれるのかもしれない。

「そう……ですね」

素直に頷くと、君嶋くんは優しい眼差しを向けた。
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