15歳、今この瞬間を
「…わかった。行くぞ夢希」

「え⁈ちょ…、佐久田くん……!」

意外とあっさり引き受けてしまった佐久田くんは、体育館の出口へと歩きだしていた。

「待ってよ……!」

そしてなぜか、それを追いかけるハメになったあたし。

体育館を出て渡り廊下を歩き、校舎の中に入ったところで佐久田くんがようやく振り返った。

「佐……」


それは、言葉が止まってしまうほどーーー。

静かに…穏やかに目が合った。

「夢希、どこから見に行こうか」

「……」

佐久田くんの笑顔は、あたしをあたたかくする。

それはいつも、ふいにやってくるんだ。

「そうか、夢希は初めてだったよな」

「……」

そう言いながら斜め上の方を見ている佐久田くんを、あたしの目は自然と追っていた。

今、こうして2人でいることが……不思議に思えて。

「じゃあ1年生のクラスから回ろっか」

あたしは、頷くことしかできなかった。

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