全て美味しく頂きます。
「悪い長谷川。
 ついカッとなって…余計なことを」

 彼らが行ってしまっても、その場に立ち尽くしている私を、彼は心配そうに見つめた。


「___いいの」

 ようやく、息ができる。
 私はゆっくりと顔を上げると、彼に向かってニッコリと笑ってみせた。


「何だか、スッキリした。
 狡い男なんだって、早く終わらせなくちゃいけないって分かってたのに…
 それじゃあんまり自分が可哀想だって。薄皮一枚のプライドを守るのに必死で」

 いかん、泣きそうだ。
 鼻を吸い上げた私から、彼はそっと顔を逸らしてくれた。


「それと…
 祥善寺がああ言ってくれたから、私、あの人の前でミジメな女にならずに済んだから。
 祥善寺には、ひどいとばっちりだったけど」

「俺は別に、なあ長谷川…」

 彼が、私の肩に手を置いた。


「…ごめん。
 今日はやっぱりこのまま家帰る。

 明日のことも考えなくちゃいけないし」

「明日のこと?」

 ん、私は小さく頷くと、肩に置かれた手をそっと払った。
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