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ついて来ると思ったけど、
なぜか彼女は悲しそうな顔をしてこっちを見つめるだけだった。
「何してんの、早く!入学式遅れるよ」
笑顔で言っても足を踏み出そうとしないから、強引に手を引っ張っていった。
掴んだ右手は、今にも砕けてしまいそうなほどか細いくて。
〝ありがとう〟と言うその声は、今にも消えてしまいそうなほど小さい。
そして〝友達できて嬉しい〟と言うと、また悲しそうな顔をした。
おまけに今度は泣きそうだ。
「大丈夫? さっきから泣きそうだけど」
きっと何かあるんだ。
そう推測した。
「髪、かわいい」
花びらを取って、ポケットにしまう。
もう何も聞かなかった。
ーーそれが、俺の優しさ。