only
さすがに鞄を持っていかれたらついてこない訳がない。
階段付近まで来たときに後ろを振り返ると、やはり彼女は俺の後を焦りと驚きの表情で追ってきていた。
「鞄返してほしい?」
「………」
彼女は黙ったままだった。
シンと静まり返る廊下。
「友達になってください」
俺の声だけが響いた。
俯いていた彼女が顔をあげて、また、驚く。
さっきまでの雲はなくなっていて、桜の花びらが風にのって舞っていた。
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