海へ...
夏が終わり、秋になった頃。

いつもどおり、漁を終えたあたしたちは、カオルの小船で陸へと戻ってきた。

すると、見慣れないクルマが、あたしたちの前に止まっていた。

お相撲さんだった。


あたしは知らなかったけど、この時期になると、毎年、地方巡業中のお相撲さんが村に来るんだって。

村のみんなは、年に一度のお相撲を楽しみにしてるらしいけど、あたしはパス。

お相撲なんかより、カオルと漁をしてる方が、ずっと楽しいもん。


クルマから出てきた、一人のお相撲さんが、じっとあたしを見ていた。

あたしはパッと目があって、その瞬間、なんだか不思議なキモチになった。

目が合っていた時間は一秒くらいだけど、あたしには永遠のように感じられた。

恥ずかしくなって、プイと目を逸らした。


それを見て、カオルが

「どうしたんだ? 真っ赤になってるぞ」

と、からかった。

お相撲さんに見つめられて、真っ赤になっていたなんて、恥ずかしい……!
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