海へ...
真実の海
「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空、度一切苦厄。舎利子。色不異空、空不異色、色即是空、空即是色・・・」


あたしは般若心経を唱えながら、海へと向かった。

冬の冷たいクウキが、あたしの肌を刺激する――。


カオルの父――、


いえ、あたしのホントウのお父さんであるユーキの日記を読み、


あたしはすべてを理解した。


東京にいた時、観光ガイドブックで読んだことがある。


滋賀県には「深きものども」と呼ばれる水棲人間が住み着き、


彼らはクトゥルフという邪神を崇拝していることを――。



そして、今では理解している。



私もまた、


「深きものども」の一人であったことを――。
< 57 / 59 >

この作品をシェア

pagetop