海へ...
カオル
出会い
放課後、何もすることのないあたしは、浜辺でぶらぶらと海を見るのが日課になっていた。
滋賀県には何もない。テレビも映らないし、ラジオも入らない。
本屋も一軒もないし、もちろんゲームショップなんてない。
2008年とは思えない程の、文化的孤立地帯。それが滋賀県。
あたしにできるのは、寄せては帰る、波を見るだけ。
ずっと、波を見ていると、一人のオトコに話しかけられた。
「海が好きなの?」
「ううん、ぜんぜん」
オトコは漁師風だった。
「潮の匂いは?」
「大嫌い。臭い。ごはんがまずくなる」
あたしは犯されると思った。
でも、漁師は怒らずに、アッハッハと笑った。
そのとき、初めて気付いたけど、オトコはあたしが初日に見た若い漁師だった。
近くで見ると、やっぱり、カッコイイ……。
ううん、でも、ダメ。
第一次産業従事者だもの。
オトコは言った。
「オレ、カオル。お前、オレの仕事を手伝えよ」
あたしはカオルの船でバイトすることになった。
滋賀県には何もない。テレビも映らないし、ラジオも入らない。
本屋も一軒もないし、もちろんゲームショップなんてない。
2008年とは思えない程の、文化的孤立地帯。それが滋賀県。
あたしにできるのは、寄せては帰る、波を見るだけ。
ずっと、波を見ていると、一人のオトコに話しかけられた。
「海が好きなの?」
「ううん、ぜんぜん」
オトコは漁師風だった。
「潮の匂いは?」
「大嫌い。臭い。ごはんがまずくなる」
あたしは犯されると思った。
でも、漁師は怒らずに、アッハッハと笑った。
そのとき、初めて気付いたけど、オトコはあたしが初日に見た若い漁師だった。
近くで見ると、やっぱり、カッコイイ……。
ううん、でも、ダメ。
第一次産業従事者だもの。
オトコは言った。
「オレ、カオル。お前、オレの仕事を手伝えよ」
あたしはカオルの船でバイトすることになった。