愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
……だが、それと同時にこんな姿をあの幼馴染にも見せたのかと思うと、身勝手な苛立ちも込み上げるわけで。
「ほら、もっとこっちにこいよ」
彼女の腕を掴み、強引に俺の方へと引き寄せた。
この部屋であいつと二人っきりだったのかと思えば思うほど、強い憤りを感じてしまい、
驚く彼女の背中にそのまま腕を回し抱き締めると、やっぱり焦ったような声が飛んでくる。
「コウさ……、あんまりくっつくと風邪がっ……」
「知るか、少し黙って大人しくしてろ」
そう言ってこの苛立ちを誤魔化すようにきつく抱きすくめると、どうしようもなく彼女への愛しさが自分でも戸惑うほど溢れてくる。
同時に押し寄せてくるのは彼女への独占欲。
「少し安心させてくれ」
こんな時にどうかと思う。
だけどこんな感情俺は知らない。
一人の女をこんなにも取られたくないと思ったこともない。
こんな風にあからさまな嫉妬を覚えたのも、もしかしたら、初めての経験なんじゃないかと思う。