愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

それから梨央と一緒に向い合わせで横になると、俺は無意識に彼女の髪を撫でていた。


気付くとつい、こうしてしまう。

俺のマンションに泊まるときと同様、もはや癖になりつつあるこの行動。
柔らかなねこっ毛の髪質がふわふわとしていて気持ちがよく、俺好みの髪質だといっても過言ではない。



「途中苦しくなったら遠慮なく起こせよ」


彼女の頷きを確認すると、俺も疲れたように目を閉じる。

シングルベッドに大人が二人。

正直窮屈さがあるのは当たり前だが、たまにはこういうのも新鮮でいい。

梨央を必要以上に抱き寄せてくっついて、お互いを温め合うのも案外悪くないと思う。


「あ、汗臭くないですか?」

「全然、気になるなら朝起きたら一緒にシャワーでも浴びるか?」


悪戯に言葉を選び、梨央の耳元に囁くと面白いぐらい腕の中の体がビクついた。


「俺が体の隅から隅まで綺麗に洗ってやるよ」

「…い、言い方がいやらしいですよ?」

「これも看病の一貫だ」


と笑いを含みながら言えば、やっぱり困った素振りを向けられる。

梨央の手がトンっと俺の胸を叩く。


「…スケベ……」

「何とでも?明日はずっと一緒にいてやるから安心してゆっくりしてればいい」
< 111 / 282 >

この作品をシェア

pagetop