愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
梨央の表情が驚きから泣きそうな顔に変わる。
こんな言葉で彼女の不安が全て消えたのかは分からないが、これがきっかけでもっと俺に頼ってくれるようになればいいと思う。
俺はお飾りの恋人なんかいらない。
ましてや都合がいい甘いだけの関係は望まない。
「もっと俺に心開けよ」
「ひ、開いてるつもりですが…」
「もっとだ」
本当の意味で遠慮なくなんでも言える関係になるのはまだ先の話し。
俺達の関係はまだ始まったばかりなわけで。
まずはここから。
俺達のずれを一つ一つ言葉にして直していけばいい。
彼女がもう影で不安で悩んだりしないよう、安心して俺の隣に居られるように。
「…やっぱりコウさん変…、そんな甘いセリフ吐くような人じゃないのにっ」
「うっせーよ、お前が変なこと言うからだろうが。俺をこんな風に変えたのはお前だろ」
梨央が怯むように俺を見る。
「も、もしかして、私って想像以上に愛されてます?大事にされてるの?」
「好きな女大事にして何が悪い」
そう言えば、目の前の瞳が今日一番の驚きに変わる。
何を今更…
そう思い、デコピンでもしようと思ったが、次の瞬間梨央があまりにも嬉しそうに泣くから俺は動きを止め、ただその姿を見つめることしかできなかった。