愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「い、いいのいいの!とりあえず顔を上げて、ほら!」
このままじゃ土下座でもされそうな勢いだ。
チラホラ周りの視線は気になるし、ここはひとまず落ち着いてほしい。
「慎ちゃんの気持ちは分かったから、せっかくだしもっと落ち着いて話そう、…ね?」
私がどうどうとなだめると、慎ちゃんは少しして「ごめん、そうだな…」なんて納得したようで、私の言葉通りゆっくり顔を上げた。
その仕草も辛そうで私まで切なさが伝染してしまいそう。
ていうより、慎ちゃん少し痩せた……?
「とりあえず、被害届けを取り下げてくれてありがとう。本当になんて感謝したらいいか……」
「……うん、そのことについてはうちの両親もみんな納得済みだから大丈夫だよ」
あの後なんか違うなって思い、私からコウさんに提案をした。
彼は「本当にいいのか?」なんて聞いてきたけれど、私の思いを何となく悟っていたのか、案外すんなり私の我が儘を聞いてくれた。
そして帰ってきた父と母にも全て話した結果の結論だった。
両親も複雑そうな顔はしていたものの、私の意見に賛成をくれのだ。
確かに彼女のしたことは犯罪行為で、許せるものじゃない。だけれど彼女のことをあのまま蔑ろにもできず、こういう結果になってしまった。