愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

「お互い前を向いて頑張ろうね」

「……だな」

「もう自分を傷付けることもやめてね」

「……ああ」


慎ちゃんはただ一言そう言って何かを堪えるように目を閉じた。

私はそんな彼にこれからも頑張って欲しいと願い、ようやく今までの緊張が少しほぐれたような気がした。

慎ちゃんならきっと大丈夫。

だって慎ちゃんだもん。

これで挫折するような人じゃない。

ずっと見てきた私だからこそ、間違いないと思うから。


「お互いの未来に向かって1歩づつ、自分の為に頑張ろうね」


吹っ切った笑顔を向けると顔を上げた慎ちゃんが目を見開き、動きを止める。
だけど私を見つめる瞳はとても温かく、ドキッとするほどの柔らかな表情をくれた。


「いつの間にか大人になっちゃって…」


まるで親から子へと向けられる言葉だなぁ、なんて思いながらも私は否定することなくふふっと笑みを溢す。


「私も色々あったからねぇ。沢山泣いた分だけ少しは……ね?」

「そっか…、強くなったんだな」

「慎ちゃんもいい男になったと思うけどね」

「いや…、真白さんには負けると思うけどね」


慎ちゃんはそう言ってどこか苦笑いを浮かべた。
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