愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「正直まだ梨央のことは簡単に諦められそうにはないけど、彼になら安心して任せられそうだし俺はこのまま潔く退散するよ」
はぁ、と何度目かの溜め息を溢した慎ちゃんだったけれど、その表情はさっきまでとは違い、とても晴れやかなものに変わっていた。
「未練がましいかもしれないけどさ、これでも早く気持ちを切り替えなきゃって頑張ってるんだ。
……でも、できるならもう暫くお前のことを想ってることだけは許してほしい。ここまできたら最後まで梨央が幸せになるところをこの目で見守っていたいんだ。……て、もう十分幸せだっけ」
「慎ちゃ……」
その思いが嬉しすぎてなんて答えていいか分からなかったけれど、それでも胸の奥がじーんと熱くなる。
最後に「本当に大切だったんだよ」と言われたら私もこの想いを伝えられずにはいられない。
言いたいことは1つだけ。
「ありがとう。私も慎ちゃんのこと大好きだったよ」
とても…
私の18年間をありがとう。
貴方と幼馴染みになれて良かった。
慎ちゃんと過ごした日々はとても楽しいものだったから。
私は幸せものだ。心からそう思う。
「私も慎ちゃんの幸せを願ってるからね。これからも幼馴染みとしてずっと…」
最後にとびっきりの笑顔を向けた。
ありがとうと、今までの感謝をこめて笑い合った。
とても晴れやかな1日だった。
心の中がとても温かいものに包まれていくようで、素直に嬉しかった。
本当にありがとう。
こんな形だったけれど、もう一度慎ちゃんに再開できて良かったと心からそう思えた瞬間だった。