愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

※※※


それからの数週間はあっという間に過ぎた。気付けばコウさんとの約束の1ヶ月になり、約束通り彼は私を迎えに来てくれた。

とは言っても会えない間、毎日電話はしてたからコウさんの声が聞けなかった訳じゃない。

フライングで大晦日の夜中に少しだけ会うこともできたわけで。

それから3週間後の今日、私は彼の車に乗せられて弦さんのお店に行くことになった。


「お久しぶりです」

「元気だったか?」

「はい、とても」


私の言葉を聞いてコウさんが頭の上に手を乗せくしゃくしゃと髪の毛を乱す。

その仕草にドキッとさせられつつも、久しぶりに見るコウさんはやっぱりかっこいい。だけど心なしか少し痩せたように見えるのは私の気のせいじゃないよね?


「ちゃんと食べてます?」

「まぁ、ぼちぼちと」

「食べてないんですね…」


これだからおじさんは。仕事が忙しいのは分かるけど自己管理ぐらいちゃんとしてほしい。

仕事熱心なのはいいことだけど、これでもし倒れたりなんかしたらそれこそ本末転倒だ。
洒落にならないよ。


「お願いだからちゃんと食べてくださいよ」

「分かってる。だから今日はそのつもりで此処に来たんだけど?」


弦さんのお店の前まで来ると「貸し切り」という看板がすぐに目についた。

そんな様子に思わず首をかしげつつ、私はコウさんを見上げた。


「今日って何かあるんですか?」

「さあな、入れば分かるんじゃね?」


そう言ったコウさんはなんの躊躇なく取っ手を掴み、目の前の扉を開けた。
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