愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「お前に言われなくても本当に欲しいものは意地でも手に入れる覚悟だからお節介な心配は無用だ」
「えっ……」
一瞬息が止まるかと思った。
コウさんの視線が敦士さんの方から急に私の方へと向けられた。それがあまりに真剣で唐突で、ビックリした私は目を合わせたまま動きを止めてしまう。
何でそんなに真顔で…
「梨央」
「…っ…、はいっ!」
「デザートがあるみたいだぞ?ほら、向こうにケーキやアイスもあるみたいだからお前も見てきたらどうだ?ケーキ好きだろ?」
「……あ、うん」
そう言ったコウさんは今の顔が嘘のように元の表情に戻り、目元を細めた。
私はドキッと瞬きをしながらも小さく「うん……」と言われるままに頷くしかなくて。
何だったんだろう。今のは…
そう感じるほど私の胸はドッと高鳴るのが分かったけれど、コウさんはもう普通の態度に戻ってるし、この場で深く追及することもできず、私もこれ以上考えるのはやめ、進められた通りデザートを取りに行くことにした。
コウさんは何か欲しい物でもあるんだろうか?
そう思いながらもトングを持ち、目の前のモンブランを取りよそおうとした時だった。
「…あら、どうも」
声を掛けられて、視線をずらすとそこには艶やかに彩られた指先が…。綺麗にネールアートされた手元が視界に入り、私はハッと顔を上げた。