愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
だけど、彼女がまさか私のことを知っていたなんて思わなかった。
そして彼女からの熱い視線を感じると、上から下までまるで品定めするかのようにじっくり観察され、当たり前だけど不快な感情がニョキッと顔を出す。
「えっと、私のことご存知なんですね?」
その質問に彼女は表情を変えず、口元だけを上げる。
「そりゃあ、あなた有名だもの。あの女嫌いの晃一を骨抜きにした女がいるって、署内でも噂になってるから」
骨抜き…
その表現に一驚したけれど、そもそもコウさんって女嫌いだったの?
まずはそこがひっかかったけど、よーく考えたらあのクールなコウさんならそれも有りうるか…。と、妙に納得してしまった。
「あの、コウさんとは……」
「同僚よ。同期だけあって昔から同士でもあり、よき刺激を受け合うライバルってところかしら?まぁ、色んな意味でね」
「そうですか…」
小さく頷きを返す。
色んな意味で…、という言葉に引っ掛かりは感じたが、これは想定内だ。
現に以前コウさんからは彼女と親密な関係だったことは聞いてるし、それ以前に彼女は今既婚者だということも教えてもらってるから、思いの外素直に聞き流すことができた。
「やけに冷静なのね」
「えっ?」
「ところであなたどうやって彼を落としたの?ぱっと見は可愛いけど、実際そこまで綺麗だとも思えないし」
ありゃ、言ってくれるねこの人。
外見通りキツイ性格、想像とピッタリな物言いに若干顔の引きつりを覚えたけど、ここは冷静にしなきゃ。
せっかくの御祝いの席だもん。
和やかな空気だけは壊しなくない。