愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「うそ……。コウさんってそんなに凄い人だったんですか?」
「だから言ってるでしょ?彼は優秀よ。将来有望だもの。このままいけばいずれ父親の後釜になるのも普通じゃないかしら?上からも十分期待されてるわけだし」
聞いてるうちにどんどん顔が青ざめていくのが分かる。
あのコウさんが…。って、思うと動揺し過ぎて上手く言葉が出てこなくなってしまう。
だけど彼女はそんな私なんかお構い無しに次々に衝撃な事実を述べてくる。
今回の昇進はむしろ遅いぐらいだと。
本当はもっと早くからこの話はすでにでていたらしいのだけど、それをコウさんがずっと渋り、避けていたんだとか。
「それはどうして…」
と疑問に尋ねれば彼女は渋い顔をしてチラリ、コウさんの方を覗き見た。
「俺の性に合わないんですって。自分のやり方で犯人を追い回して体を動かしてた方が俺にはあってるんだよって、すました顔で言うのよ。本当憎らしいと思わない?」
「………」
「かっこつけすぎなのよ」
まるで舌打ちまでしそうな勢いだったけれど、私の唖然とする視線に気づいたのか、彼女は一瞬我に返ったように素にもどり、持っていたお酒のグラスを飲みほした。
「私としたことが取り乱したわ……」
「いえ……」