愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
思ったよりも悪い人ではないのかな?
なんて呑気に考えて視線をそのままにしていると、
「なんてね、正直私も偉そうなことは言えないけど……」
ボソリ聞こえた声に私は「え?」と思わず聞き返してしまう。
「正直悪いと思ってるのよ。あの時酔っていたとはいえあなたには嫌な思いをさせたと思うから」
「……それって……」
やっぱりあの時のことだろうか?
一瞬なんのことを言われてるのか分からなかったけれど、目の前の彼女があからさまに罰の悪そうな表情に変わったのに気付き、私の中でそれが確信めいたものに変わる。
「言い訳するつもりはないわ。けどあの日は旦那と喧嘩してムシャクシャしてて…。気に入らなかったのよ。
普段クールな顔して滅多に顔色を表に出さないあいつがよ。あなたの話をしながらそりゃ惚けたように砕けた顔をしてるんだもの。私としては面白くないわよ」
「それって…、焼きもちってことですか?」
「違うわ。ただの嫉妬よ。自分だけ幸せですって顔してる晃一が妬ましかったの。
旦那への苛立ちの腹いせに少し困らせてやりたくなったのが正直な本音よ」
そう言った彼女は心底バカなことをしたと自分でも反省しているようだった。
本当、幼稚だったわ。なんて言いながら私からプイッと視線を反らす。