愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「初めに言っときますけど、私は苛めてないわよ」
コウさんの怒りのオーラを感じただろう彩香さんが先回りをしてそう言った。
「けっ、本当かよ…」
「当たり前でしょ、あなたの悪口しか言ってないから安心して」
「それが余計なんだよ。つーか梨央、こいつに嫌なこととか吹き込まれなかったか?」
コウさんの声が低いトーンに変わる。
これには私も否定の意味を込めてブンブンと手を横に振った。
確かに最初は威圧的な態度だったけれど、今じゃすっかり打ち解けられている。
こんな関係性は正直異例で初めてだけれど、彼女のことは嫌いじゃ…ない。すでにもう気を許し始めちゃってるぐらいだもん。
「だ、大丈夫です!むしろさっきから意気投合しちゃって…」
「そうよ、侵害ね。私だってそこまで嫌味な女じゃないわよ」
コウさんと彩香さんの間でビリビリと火花でも飛んでそうな勢いだ。
「どうだか…」だなんてコウさんは疑いの目を向けているし、
彩香さんも「本当ムカつく男」だなんて言って キツイ目をよりキツイものに変えている。
そんな二人に挟まれて私はハラハラドキドキ、当然落ち付かなくなってしまう。