愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
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ほろ酔い気分の帰り道、私はタクシーを降りるとコウさんに肩を抱かれて彼のマンションのエレベーターに乗った。
さっきの賑やかな世界とは違い、静かな空間に二人…
ホッとするのもつかの間、当たり前のように連れて来られたけど今日は普通に泊まっても大丈夫なのだろうか?
明日は仕事?それとも休みなの?
肝心なことを聞き忘れていたけれど、このまま帰る気にはなれないし、やっぱり一緒にいたいわけで。
ここはあえて何も聞かず状況のなすがまま、自分の欲望のままに少し我が儘になってみることにした。
「何か飲むか?」
部屋に入るとコウさんがコートを脱ぎ、ネクタイを緩めながらそう言った。
そんな優雅な仕草に惚れ惚れしながらも、私はソファーに座ると「お任せで…」なんて照れ笑いを浮かべた。
どうしてか今日に限って妙な緊張が込み上げる。
彼の後ろ姿を眺めながらドキドキと初めてこの部屋に来た時のような胸の高鳴りが収まらないのだ。
きっとそれは敦士さんや彩香さんの言われた言葉のせい。
私の為に昇進を決めたとか。
私との将来を考えてるとか。
自分より守りたい人ができたらもう無理だ。
なんて言われたら、どうしたって意識しちゃうに決まってる。気にするなっていう方がおかしいでしょ?