愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
私はズズッと鼻をすすり、涙ながらに言った。
「わ、私で、いいんですか?」
「よくない奴にこんなことしねーよ」
その言葉が何より嬉しかった。
私は再び合鍵に視線を落とし、意思を固めるようにそれをぎゅと握った。
「返品なんて……しません。コウさんがそこまで言うなら貰ってあげます。永久保存です」
顔を上げ、思わず泣き笑いを向ける。
おまけに今日の買い物も全てこの為だなんて聞かされたらもう断れない。
よく考えたらおかしいと思ったんだ。
スリッパやエプロンならともかく。
歯ブラシやシャンプーにトリートメント。
その他柔軟剤や食器全般、そんな細々したものまで私の好みで全て買い替えてくれたんだもん。
気付けなかった私もあれだけど、これはむしろコウさんの陰謀だ。
「もしかして、私って嵌められたんですか?」
「言っただろ。男の優しさの裏には下心があるって。それに気付けなかったお前が悪い。そろそろ観念しろよ」
「……はい」
参りました。
やっぱりあなたには敵いません。
私はコウさんの手のひらでまんまと転がされているようです。