愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
体を突き刺すような寒さから季節は変わり、今じゃ蝉の鳴き声が耳にまとわりつくような暑苦しい残暑。
梨央と暮らし初めて半年ほどが過ぎた頃、俺の生活はいい意味で劇的に変わったと思う。
一番はやはり食生活で、彼女は専門学校に通いながら毎日手の込んだ料理を作ってくれる。
それがやっぱり身にしみてありがたく、新たな役職についた俺には目に見えて感謝するものになった。
正直今の立場になったことで直接現場に出る回数はほとんど減ったものの、署長とは名ばかりの事務的作業は増え、それ意外にも部下への教育はもちろんのこと、今まで以上の責任の重さも加わればさすがの俺も疲れを感じない訳がない。
けれど、そんな時に限って彼女はいつも体に合わせた料理を作ってくれる。
それは優しく労るものであり、時にはスタミナを付けてくれるパンチのものからさまざまに変わり、レパートリーは幅広い。
俺のことをよく見てるなとつくづく思う。
きっと彼女は俺以上に俺のことを知っている。
というより、知ろうとしてくれてるのだと思う。
あの大きな瞳で真っ直ぐ見つめられると、ゾクリ、愛欲を駆り立てられるというか、全てを俺のものにしたいという欲求が顔を出してしまい、正直それを押さえるのが必死だった。