愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「そういや最近噂になってるぞ。お前が本命なのか奥さんなのか分からないが、愛情弁当を毎日食べてるって」
そんなとある平日の仕事終わり、弦さんの店での敦士との何気ない会話。
飲みに行こうと誘われた俺はいつものようにお決まりのカウンター席に座る。もちろんそんな敦士に仏頂面な顔を向けて。
「何だよそれは」
「最近よく聞かれるんだよね。真白署長はいつ結婚したんですかって」
敦士のニヤリ顔が俺を刺す。
「そりゃ皆ショック受けてたぞ。ほら、署内でも一番人気の愛ちゃんなんて、つい最近泣きながら俺に相談してきたぐらいだし」
「アホか」
「モテル男は辛いねぇ」
「何しに仕事に来てんだよ」
「そりゃあ、世の中の平和を守ると見せかけて、実は自分の将来有望な結婚相手探しだろ。まずは自分の未来も守らなきゃだからな」
アホらしい。
ちゃんと自分の業務に全うしてくれ。
そう呟いた俺に敦士は豪快に笑った。
「お前って、本当二重人格だよな?」
「あ?」
「気付いてない?仕事の時の顔と梨央ちゃんと一緒に居るときの態度はまるで別人。プライベートの時のあのユルユルとしたお前の顔を見た日にはうちの署のやつらもそりゃあ衝撃で腰でも抜かすんじゃねーか?」