愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
そんな敦士の物言いに心底深いため息が出た。
「俺はオンとオフを使い分けるタイプなんだよ。お前みたいに常に誰とでもフレンドリーに付き合えるほど器用な人間じゃないんでね」
嫌味としかとれない口調はいつものこと。敦士もそれをよく知ってるため、全く動じることなくヘラヘラと薄ら笑いを浮かべた。
「ま、俺はそう言うお前が好きよ。見てて面白いっていうか…、つーかさ、今後また同じようなことを聞かれたら俺は何て答えればいい?うちの署長には可愛い奥さんがいるって普通に宣言しちゃっていいわけ?」
「………ご自由に」
俺は敦士から視線を落とし、持っていた煙草に火を付けた。
正式にはまだ夫婦ではない。
籍を入れてるわけではないから今はまだ同棲をしてるだけであって、悪く言えば結婚生活の真似事をしているようなものだ。
「あれだろ?梨央ちゃんが無事に専門を卒業するまでは籍を入れないんだっけ?」
「とりあえずはな」
「ふーん…」
と呟いた敦士が悪戯な笑みを向けて、あからさまな一言を。
「もうややこしいからさっさと入れちゃえばいいのに。どーせもう新婚みたいな生活送ってんだろ?何も問題ねーじゃん。早くお前も身を固めちゃえよ」