愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

帰り際俺はそれとなく梨央の携帯に連絡を入れた。


『今から帰るよ』と。


それから5分も経たないうちに彼女からの返信があった。


『了解です!気をつけて帰って来てくださいね。今日は暑いので冷やし中華です」


なんて可愛らしく絵文字か入った文面に自然と目元を緩める。

こんな些細なやり取りが無性に心地いいだなんて、死んでも敦士なんかに悟られたくはない。

家に帰れば彼女が待っている。

それを想像するだけでこんなにも嬉々たる気持ちになれる俺は自分が思ってる以上にけっこう重症なんだと思う。



「敦士さん元気でしたか?」


家に帰ると食事の準備をしながら梨央がさりげなく聞いてきた。

すでに夕飯を終えている彼女は部屋着に着替え、片手にビールを持ったラフなスタイル。
俺に出来上がった冷やし中華とスープを用意するとニコニコと向かいの椅子に座った。


「相変わらずだよ、あいつは」

「そっかー。私もまた今度会いたいなぁ。唯さんは今里帰り中なんですよね?早く赤ちゃん見たいです」

「ああ」


先月の終わりに敦士達の子供が産まれた。

性別は女の子でぱっと見はどちらかと言えば唯の方に似てるんじゃないかと思う。


「この前唯さんが写メ送ってくれたんです。ほら、めちゃくちゃ可愛くないですか?」


携帯の画面を俺に見せながら梨央が嬉しそうに笑う。

ふにゃり、よっぽど嬉しいのか目尻まで下がり砕けた笑顔は不覚にも可愛らしく、そんな顔に釣られて俺まで「そうだな」なんて口元を上げそうになる。
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