愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「敦士さんって今自宅に一人なんですよね?やっぱり寂しがってました?」
「相当な。うざいぐらいだ」
そのせいで用もなく度々呼び出される俺のみにもなってほしい。
おまけに今日みたいな突っ込み、子供ののろけ話とか永遠に聞かされれば、さすがの俺もうんざりと面倒になってくる。
「耳にタコができるぐらい言ってたぞ。自分の子供は可愛すぎて相当ヤバイらしい。お前も早くつくってみろってさ」
「…へ?…へぇ〜…」
途端顔を真っ赤にし、あからさまに視線を反らした梨央に俺はいつものごとく悪戯心を剥き出しにする。
彼女のこういう表情は病み付きになるもので。
さすがにこの話題はまだ早いとは思うものの、梨央の慌てふためく態度が可笑しくてつい、その狼狽え振りを茶化したくなる。
「どうした?顔が赤いぞ」
「ふ、普通ですっ」
わざとらしく顔を覗き込むと、ますます顔を反らされ笑いが込み上げる。
「もう、すぐそうやって……」
「くっ…俺にもビールくれ」
ギロリ睨まれた瞬間梨央のビールを奪い取ると俺は素知らぬ顔でそれに口をつける。
こんな何気ないやり取りにまで癒しを感じてしまう。
彼女の怒った顔も仕草もまた今の俺にとって大切な日常の一部と化している。