愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

誕生日当日ーー…

この日は平日で、有給で休みを取っていた俺は梨央が帰る時間を見計らい、通っている専門まで迎えに行った。

確か今日は午前中までの授業だと言っていたのを思い出し、俺はあえて約束はしてないものの、門の近くに車を止め、彼女が出てくるのをそれとなく待っていた。

ふと後部座席に置かれている花火に目を向ける。

結局、彼女が俺に要望したものはこれだった。


ーーコウさんと一緒に花火がやりたいな。
あと、ラーメンも食べたい、です。


なんとも可愛らしいお願いである。

そんなことでいいのかと思いつつ、彼女らしい要望に何だか温かな感情も込み上げてくるわけで。

次の瞬間、数人の生徒達と話ながら正門から出てきた梨央を見つけ、俺は車から降りるとすかさず声をかけた。


「梨央」


それに反応し、驚いた素振りを見せた梨央が不意をつかれたようにそこで立ち止まる。


「えっ……」

「授業終わったか?」

「ど、どうしたの!?」

「暇だから迎えにきた」

「暇って……」


そこでなぜか何人かのただならぬ視線をひしひしと感じたが、あえて気にすることもなく梨央と親しそうに話してた子だけに「どうも」と軽く会釈をして彼女をその場から連れ出した。
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