愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

「…あ、の……」


それでも今日という日に後悔なんてしてほしくない。

戸惑う梨央を連れ、俺は適当に目についた感じの良さそうな店に入った。

そこで梨央に似合いそうな物を上から下まで一式揃えると一通り試着し、彼女が気に入ったのを見届けるとそのままレジに向かった。

その時梨央が慌てた様子でストップをかけ、値段のことを指摘されたが俺はそれを素知らぬ顔でかわした。


「アホか、今日ぐらい何も考えず我が儘三昧振る舞ってろ」


そう言った俺に彼女は口ごもる。
俺だってそれなりの稼ぎはある。
するとそこで梨央が顔を真っ赤にしてポツリと言った。


「今日のコウさん素敵すぎる……」

「アホか」


苦笑いを浮かべて店を出た。

彼女はやっぱり恥ずかしそうなまま。
だけどそのまま腕を組んで歩きたいと言う要望に答えてやると、梨央は恥じらいながらも花を咲かせたような笑顔を見せた。


「ありがとうございます」

「ああ。その服似合ってる」


その一言にまたしても顔を赤く染めらした梨央が面白く、けれど今まで以上の愛しさが募っていく。

俺はそんな梨央にやっぱりらしくない態度の甘さを見せ、その後も有意義な時間を彼女と二人で名一杯過ごした。
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