愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

最後の締めはやっぱり花火だった。

やる場所に少し困ったが、海に行きたいという梨央のリクエストに答え、俺は今の場所から一番近い場所を選択してそこへ連れて行った。

車から降りると真夏特有の少し湿り気のある風が頬や手足にまとわりつく。

俺は持参したバケツとゴミ袋を片手に持つと、梨央の手を引いて海岸に続く石段をゆっくり降りた。

砂浜までたどり着き、暫くそこを歩くと大人二人は余裕で座れそうな大木が落ちていた。

そこがちょうどいいと言わんばかりに場所を定めると、さっそく準備に取りかかり、手持ち花火を取り出し火を付けた。


「わーい、今年初の花火だぁ。海で花火なんていつぶりだろう?小学生ぶり?家族で来たのが最後かも」


彼女は目を輝かせながら子供みたいに笑う。

周りには思ったより誰もいなかった。街頭のまばらな海岸で梨央と二人、時がゆっくり流れていく。


「コウさんは?いつぶりぐらいですか?」

「俺はどうだろうな、やっぱり学生の頃が最後なんじゃねーか?」

「あ、分かった!あれでしょ。たむろってたんでしょ?よくいう不良仲間とバイクでブンブン言わせてた感じですか?」

「おい」


それはどういう意味だ。

俺を何だと思ってると言わんばかりにつっこめば梨央は笑いながら「がらの悪い不良」とあっけらかんに言いやがる。
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