愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「違うんですか?」
「変な詮索はしなくていい」
可笑しそうに笑う梨央に、俺はやれやれと視線を反らす。
バイクを乗り回してたというのはあながち間違いとは言わないが、いたって健全。そこまで悪いことをした記憶もない。
「絶対喧嘩とか強かったでしょ?」
「まだ言うか」
「だって……」
これ見よがしに梨央が悪戯な顔を向ける。
これには俺も呆れ顔になって梨央を見る。
「そうそう、最初にコウさんを見た時、絶対この人ヤバイ人だと思いましたもん。宗一郎さんと同じでどこか違う組のヤクザかと」
「言ってくれるじゃねーか」
「ほら、それそれ。その口調もそうだし、もう雰囲気全体がダークなんですよ」
はっちゃけたように梨央が笑う。
俺は侵害だと眉を寄せて、だけどそれは次第に懐かしむような表情に変わり、俺達は1年前を思い出すかのように同じタイミングで顔を見合わせた。
「懐かしいですね」
「ああ」
「こうしてると思い出しちゃいます。コウさんと去年初めて花火をした時のこと…」
バチバチと弾ける光の中、梨央の顔がやたら柔らかく印象的な眼差しになる。
「今思えばあの時からです。コウさんに対しての見方が180度変わったのも」
「へぇ〜、それは興味深いな」