愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「本当にありがとう。なんてお礼を言ったらいいか」
それから1時間ぐらいしておじ様はすっかり元気を取り戻し、私と弦さんに向けて深々とお辞儀をした。
「そんな、困った時はお互い様です。でも本当大事に至らなくて良かった。…あの、もしよろしかったら自宅まで送りましょうか?実はあと30分ぐらいしたら私の彼が迎えに来るんです」
これも何かの縁だ。
良ければと思って言ったのだけど、おじ様は静かに顔を横に振った。
「流石にそこまで迷惑はかけられませんよ。そのお言葉だけ有りがたく貰っておきます。彼とのせっかくのデートを邪魔しては申し訳ない」
デートというよりは迎えに来てくれるだけだけど。
そのまま少しこの店で軽く飲んで帰る流れにはなっているけど、それはいつだってできる。
コウさんだって事情を説明すればきっと快くオッケイしてくれると思うんだけど、おじ様は最後まで顔を縦に振らなかった。
「本当にありがとう。このお礼は必ずきっと…」
そう言って私に和やかに手を振った。