愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
ピシッと睨まれながら強く額を指で弾かれたら流石に痛い。頬を膨らませた私はカチンとむくれる。もう、すぐ子供扱いするんだから…
と、暫くコウさんを無視して怒っていたけれど、店を出た瞬間当たり前のように手を繋がれて、引き寄せられた私は不覚にもきゅんとした。駐車場までの短い間なのに…
無言で歩くコウさん。
さっきまでの怒りがシャボン玉のように弾け飛ぶ。
そのスマートな仕草に1人で怒っていた自分がバカバカしくなってくる。
「さっきは…ごめんなさい」
だから不意に足を止めコウさんを見た。
「は?別にケンカした覚えはねーけど」
そう言って何事も無かったように平然と見返すコウさんにやっぱり自分がまだまだ子供だと思い知る。
「さっきはちょっと生意気だったかなって。コウさんは怒ってないの?」
「いや、怒るもなにもいつもの光景だろ、あれは」
しれっと言う彼に拍子抜け。
「私は怒ってましたけど…」
「ああ、知ってる」
ふっと笑われて、やっぱり敵わないと白旗を上げた私は悔し紛れにそのまま彼に抱き付いた。
「もうっ、コウさんのばか。悔しいけど仲直りしたいのでぎゅってしてください」
「くっ、だから喧嘩した覚えはねーけどな」
そう言いながらも要望通りに抱き締めてくれたコウさんに自然と笑みが漏れる。
だから思いっきりぎゅーっと抱き付いた。