愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

その日は朝からついてなかった。
携帯を忘れて一度家に帰ったため、電車が一本送れて専門に遅刻するし。

今日は雨だなんてテレビでは言ってなかったのに帰りに突然の夕立に襲われるわで踏んだり蹴ったり。

「今度から折り畳み傘をバッグに入れとかなきゃなぁ」

雨に濡れながら呟いた私は弦さんのお店まで走る。
タオルと傘を借りようと思ったのだ。
幸い弦さんのお店は駅から近い。家に帰るよりも遥かに近かった。

だから雨宿りも兼ねて…、と思ったのだけど今日はとことんついてないらしい。
1秒でも早く…と、普段歩かない裏道を通ったのが間違いだった。
おまけに雨で視界も悪かったため、不注意で前から歩く通行人とぶつかってしまったのだ。

それがまた不運だった。

「いってっ…」
「あ、すみませんっ」

体勢を正して前を見ると、赤い頭と金髪頭が視界に入る。
慌てて謝り、その場を後にしようと思ったのに2人組の1人に腕を捕まれる。
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