愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
刑事を辞めた俺とは違い、丈さんは代々警察一家という家柄のもと、着々と業績を残し実績をたたえられ、今じゃ警視総監という雲の上の存在だ。
だからここ十数年会ってはいなかったのだけど、なにがどうしてこうなったのか。
そんな丈さんが数日前突然現れたから驚いた。しかもあの嬢ちゃんと一緒にだから終始穏やかじゃない。
「いったいどんな策略ですか。貴方という人があんなこ芝居までしでかして」
「いやなに、ちょっとした親心だよ。どうしてかここ最近妻の菜摘が晃一の彼女に会いたいと言ってきかなくてな」
「へー…、あのなっちゃんが?」
「弦にも迷惑をかけたな。この前はわたしのあんなこ芝居に付き合ってくれて感謝するよ」
「正直ひやひやだったんですよ?嬢ちゃんに変に思われないか内心穏やかじゃなかった」
「くっ、それは悪かった。けど私の演技もなかなかのものだったろう?」
「たく…」
呆れ顔で丈さんを見た。
相変わらずこの人は突拍子のないことを。
昔からこの人には驚かされることが多かった。仕事でも狙った被疑者は逃がさない。執念と熱意で徹底的に追い詰め手錠をかける姿は今でも鮮明に残ってる。
ふと記憶が蘇り、俺はやっぱり苦笑い。
一緒に仕事をしていた時とあまり変わっていない。