愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
次の日、梨央を自宅まで送り届ける最中俺はさりげなく昨日の話題を自分からきり出した。
「クリスマス、何処か行きたいところでもあるのか?」
すると、今までボーッと外の景色を見ていた梨央が不意を突かれたようにこちらに向いた。
「………えっ?」
この様子からして間違いなく昨日の会話は覚えてないんだろう。
「クリスマス」という言葉に反応しながら、梨央が面白いぐらい考える素振りを見せてくる。
「クリスマス、一緒に過ごすんですか?」
……おい、とさすがに鋭い突っ込みを入れたくなったけど必死に堪えた。相変わらずの小悪魔ぶりと、とぼけよう。
これが天然じゃなく計算だったら間違いなく、俺は今暴言の一つでも吐いてることだろう。
「一応そのつもりで話してるんだが」
「えっ、でも、仕事は?」
「なんとかする。もしかしたら夜からしか会えないかもしれないけど、それでもいいか?」
それを聞いた瞬間、梨央の顔が分かりやすくパァッと明るくなった。
なんだ、やっぱり会いたかったんじゃねーか。
だったら最初から素直に言えばいいのに、ややこしいんだよ。