愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
それから数日がたち、俺は仕事帰り弦さんのバーに立ち寄った。
職場の同僚、敦士に誘われたからだ。
「よぉ、お前達久しぶりだなぁ」
「弦さんどうも」
「弦さん会いたかったっす」
「つーか西田、何でお前までいるんだよ」
俺は勝手に着いてきた西田に向かっていつもの嫌みを向ける。
こいつは相変わらずで、俺になつくのはいいけれどやたらうるさい。なかなかのお調子者だ。
澤田と梨央の事件を追ってた時もやたらと梨央にちょっかいをかけてくる面倒な後輩の1人。
「いいじゃないっすか、俺もまぜてくださいよ」
「だったらちゃんとそこの地べたで大人しく座ってろ」
「なんっすか、俺は犬扱いですか?」
「犬以下だろ」
「納得」
と言って敦士が大笑いする。
弦さんも可笑しそうに笑い、西田に「ほら」とお手拭きを渡している。
これがいつもの光景だ。
あまり人を信用できない俺の唯一つ砕けられる貴重な世界。
元上司の弦さんを前にして俺は一息つくと、お決まりのお酒を注文しやっと肩の力が抜けた。