愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「言っちゃえよ、少しは楽になるかもよ」
「別に悩みなんてない」
「相変わらず素直じゃないね、晃一くんは」
「うっせーよ」
そう言いつつ、そんな無言の圧力に耐えかねて俺は息を吐く。
どうせこいつには誤魔化しても無駄だろう。そう観念した俺は先日の梨央とのやり取りを簡潔に話し出した。
別に悩んでるわけじゃない。ただ……。
さすがの腐れ縁。学生時代から一緒にここまで苦労を供にした仲間だけあってか、全てを話さなくても敦士はある程度理解したように頷き、そして納得したように口元を上げた。
「なるほどねぇ…、状況はなんとなく分かった。まず第一に、俺だったら他の男と連絡取り合ってる時点でアウト。しかもその相手が初恋の相手なら尚更だろ。晃一お前よく何も言わず黙ってられんね」
感心されるとは思わなかったが、敦士の驚きに少々心が揺さぶられる感じがした。
俺はそんな気持ちを隠すように煙草を一本、口に入れる。
「お前は平気なの?もしかしたら今頃二人は仲良く会ってるかもしれねーんだぞ。住んでる家も隣同士、気軽に行き来できる関係だろ」
「分かってる」
「いやいや、分かってねーだろ?俺だったら耐えらんねぇ。もし唯がそんな状況だったら間違いなく強制逮捕。強引にうちに連れて帰る」
「ふっ、容赦ねーなぁ、独占欲半端ねーじゃん」
「当たり前だろ。つーかお前はそうならないわけ?」