愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「俺の身勝手であいつを縛り付けるつもりはねーよ」
そう言いきると、それ以上敦士は何も言わなかった。
これ以上何を言ったところで俺の意志は変わらない。もう何も語らないと悟ったからだと思う。
気付けば西田と弦さんは別の席でクリスマスのイベントのことで盛り上がっていて、そこにはいつの間にか唯と彩香の姿もあった。
けっこう真剣に話していたんだと気付く。
敦士はそれから当たり前のように唯の隣へ行き、それに入れ替わるように目が合った彩香が俺の隣にやってきた。
「なんか辛気くさい顔してるわよ」
「おまえの顔よりましだろ」
「相変わらず嫌みな男…。それより……ねぇ、恋愛の悩みならこの私が聞いてあげましょうか?」
「結構だ。そう言ってお前が話を聞いて欲しいだけだろ」
何となく視線を合わせるとほのかに顔が赤くなっている。
手には残り少ないハイボール。
こいつ既に酔ってるな。
そう思い、ついつい冷たい言い方になってしまう。
「珍しいわね、晃一が女のことで悩むなんて」
「なんだ、盗み聞きかよ」
「違うわよ。たまたま聞こえちゃったのよ。此処に来てあんたらに挨拶しようと思ったら、何だか込み入った話をしてたから」
彩香が本格的に俺の隣に座り、持っていたお酒をカウンターに置く。
その瞬間漂った香水の香りに俺は何となく眉を寄せる。