愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「お前香水付けすぎだろ?もっと軽めにいけよ。ただでさえキッツい顔してんだから」
「失礼ね。けどお生憎様、旦那はこの顔と香りが好きだって言ってくれてるから」
「そりゃ良かったな」
俺は酒を飲みほすと、もうこれ以上ここに居たくなくて席を立った。
きっとこのまま一緒に飲んだら危険だと長年の勘が働き、俺の中の危険信号が顔を出す。
その証拠に彩香はけっこう酔ってるのだろう。何故か俺の腕を掴み、それを阻止して上目遣いで俺を見る。
「行かないで」
「は?」
「もっと話がしたい。て言うよりさっき話してた晃一の彼女ってあの事件の時のあの彼女でしょ?」
「だったら何だよ」
「妬ける。晃一のあんな顔見たことがない」
「アホかお前は。旦那が聞いたら泣くぞ。さっさと帰れよ」
「嫌よ、帰りたくない。晃一を取られたくない」
本気でアホかよ。
ついにイカれた発言しやがった。
これだから酔っぱらいは嫌いだ。
俺は彩香に冷めた視線を送り、捕まれた腕を強引に振りほどく。……だが、それは無駄な抵抗に終わり今度は強引に彼女の腕が巻き付いてきた。