愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「…あ、と…、ごめん。私も飲みたくなって来たんだけど…、またにするね。出直しますっ!」
梨央は俺と顔を合わせるやいなやそう言って慌てて背を向けしゃがみ込む。
そして落ちたバックを拾うとあっという間に店から出て行ってしまった。
その瞬間何が起こったのか今一状況が掴めなかった俺だけど、
「ちょっと何やってるの!」と唯が彩香に叱りつける声にハッと我にかえり、後を追うように店を飛び出した。
店を出るとすぐ、俺は梨央を見つけられた。
すでにけっこう遠くの距離まで走っていて、ちょうど一台タクシーを止めたところだった。
梨央がタクシーに乗り込んだ瞬間、俺は間一髪間に合い素早く閉められそうになったドアに手をかけた。
「俺も乗せてくれ」
そう言い放ち、ドカッと驚く梨央の隣を強引に陣取った。
「………えっ?」
「送ってく」
自分でも分かるほど少し冷静さを無くしていた。
心拍数が異常に上がっている。
目を見開く梨央に視線を定め、運転手に行き先を告げる。