愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

それが梨央じゃなく俺の家の住所だと分かると、目の前の顔はよりいっそう驚きに満ちたものになった。



「ちょ、ちょっとっ……」

「俺のうちで飲み直す」


この時、冷静さをどこかに落っことしてきた俺は梨央の戸惑いなんてお構い無しだった。そばに置かれた彼女の手をそっと握り締める。



「このまま連れて帰る」


誤解させたまま1人になんてさせない。

彼女の瞳をじっと見つめ、今起こったばかりの失態を思い返し、詫びの言葉を向けた。



「変なところを見せて悪かった」


それを言うと彼女の動きは止まった。

元々大きかった瞳は更に大きさを増し、瞬きもせず俺を見る。


「言い訳に聞こえるかもしれないが、彼女とは何もない。ただの悪ふざけだ」


信じるか信じないかは彼女に任せるとして、俺は嘘偽りのない真っ直ぐな言葉を向け梨央の顔色を伺う。

そんな俺に対し、梨央もまた俺の顔を見つめ返してきた。

少しの間無言の沈黙が続いたけれど、それを壊したのは意外にも梨央の落ち着いた声だった。
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