愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「分かってます」
そう言って俺の手を握り返してくれた手は思いのほか温かい。
「コウさんは悪くないです。むしろ迫られて困ってたように見えたから」
そして柔らかな表情に変わる。
どこから見ていたのかは分からないが、梨央はさっきの状況をある程度把握しているようだった。
「でも、ビックリはしましたけど……」
肩をすくませ困った素振りを見せる。
「さっきは思わず逃げちゃったけど、こうして追いかけてきてくれたことは嬉しいです。褒めてあげます」
今度は目尻まで柔らかくなった。
その瞬間体から力が抜け、そんな彼女に釘付けになる。
「私は大丈夫ですよ。心配してくれたの?」
そしてやっぱり優しく笑う。
そんな態度に何故か胸が締め付けられた。
それは梨央の本心なのか、
別に無理してるようには見えないが、どことなく本音を隠してるようにも感じ、俺の方が眉をしかめてしまう。
「怒んねーの?」
「怒ってほしいの?」
言葉を砕けさせ、また笑顔を向けようとした彼女を静止し、たまらず目の前の肩を抱き寄せた。