愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「ふふ、やっぱり可愛い。別に私は怒ったりしないのに…」
そう言って梨央の手が俺の頭をよしよしと撫でてくる。
だけどその手は次第に動かなくなり、少しトーンダウンした声が頭上から落ちてきた。
「例えあの時コウさんの気持ちが揺らいでいてもきっと、今と同じ行動をとってますよ」
「……えっ」
「だって人の気持ちなんて…、本音は分からないから」
その声が寂しそうに聞こえたのは俺の気のせいだろうか?
梨央の顔が見たくなり、俺は再び顔を上げた。
「いくら泣いて嫌がったって、ダメな時はダメでしょ?男の人って恋人の知らないところで遊んだりするんじゃないの?」
その言葉が衝撃で俺は次の言葉を見失う。
少し和らいだ心がまた急速に荒れだすのを感じ、俺は当たり前だけと眉を寄せた。
「それ、本気で言ってるのか……」
「…分からない。……でも、別にコウさんを信用してないわけじゃない。疑ってるわけでも、ただ…」
「なんだよ」
「たくさん信じた分裏切られるのは…怖い。もう嘘や嫉妬で振り回されるのは嫌だもん」
梨央が俺から視線を反らす。
寂しそうに、何かを必死にこらえてる様子は儚げでこの時、俺は彼女の奥底に秘めてる黒い闇の部分をやっと見れたような気がした。