愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「頑張って素敵な弁護士になってね」
「おう」
慎ちゃんが得意気に笑って車を運転してくれる。
彼は私に爽やかな笑みを向けると、早く一人前の弁護士になりたいと言った。
そしていつか独立して自分の事務所を作りたいと。
うんうん、慎ちゃんなら絶対凄い弁護士になれるはず。いい弁護士になれるよ。
なんの根拠もないけれど、私は当たり前のように確信し、そんな彼の横顔を見つめてシートベルトをはめた。
「なんか慎ちゃんの車に乗るの久しぶりだ」
「ああ、最後に乗ったのは大学受験真っ最中の時だったよな」
「うん、気分転換にドライブに連れてってくれた」
結局宗一郎さんが現れたせいで受験事態は意味のないものになってしまったけれど、あの時の慎ちゃんの気遣いは今もよく覚えている。
そして嬉しくてドキドキしたことも。
あの時慎ちゃんに恋い焦がれていた私は受験が終わり、無事に高校を卒業したら彼に告白しようと思っていた。
幼い頃から兄妹のように仲良かった私達は普段一緒にいるのが当たり前の存在だった。
家族ぐるみの付き合いもあり、両親が共働きで夜遅くなる時はよく慎ちゃんの家でご飯を食べさせてもらっていたこともしばしば。
彼は私にとって兄のような存在であり、何より大切な存在だった。