愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。

そこまで言って再び唇を奪われた。

まるで何か強い感情を押し付けるような激しいキス。

コウさんの唇が…熱い。

待ったなしの力強さ。

それに連動するように身体中の体温が上昇していくのは私にとって当たり前の反応で。

私はまたどうしていいか分からず「……んっ」とくぐもった声を漏らすだけ。


どうしよう…

流されちゃう。


……だけど、それは次の瞬間、廊下から聞こえてきたバタバタと駆け寄ってくる小さな足音で突然状況が変わる。


……菜々だ!

そう思った瞬間慌てふためき、私は勢いよく目の前の胸を押し返した。

そして我に返る。すぐにトントンとドアがノックされると、それはコウさんも同じのようで「残念、タイムオーバーだ」

なんて言って私とは真逆の冷静な態度で平常をとりつくろう。

コウさんが急に立ち上がる素振りを見せたから、やっぱり唖然としてしまった。

その瞬間ドアから菜々が顔を出し、熱く火照った体にすきま風が通る。


「お姉ちゃんコウくんお風呂だって。ママがいつでも入れるよって」

「ああ」

「わ、分かった」


二人同時に返事をすると、菜々がコウさんを見てニコリと笑う。


「コウくん。お風呂から出たら一緒にアイス食べよ」

「ああ」


そして彼は菜々に手を繋がれて部屋の外に行ってしまう。

私はというと、そんな光景を見つめながら当然そのまま動くことができず。

急に放たれた感覚がまるで置いてきぼりをくらったようで、突き放したのは私の方にも関わらず酷い罪悪感。

菜々の登場でホッとしつつ、だけど少し悪いことをしたような気持ちにもなり、思わず顔を曇らせるとよく分からないため息がこぼれ落ちた。
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