愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。
「お疲れ様です」
そう言って労うように声をかけると、コウさんがこちらに向き、意外そうな顔をした。
「どうした?何かあったのか?」
「いえ、何も…、コウさんが心配で。ずっと帰って来なかったので」
本音がポロリとこぼれると、やっばり向けられたのは意外そうな瞳。
私はそんな彼に向き合うように近付くと、すぐに持っていたマフラーとカイロを差し出した。
「寒くないですか?」
よく見たら、コウさんの格好はうちに来たときと同じ、黒のチェスターコートに中が茶系のトレーナー。
下は黒のメンパンという姿だった。
一見ちゃんと着込んでるようには見えるけど、やっぱり寒そう。
これに首元にも温かさを加えたらもう少しマシになるんじゃないのかな?
「頭、下げてください」
コウさんが煙草を吸い終わるのを見届けると、私は彼の首にマフラーを巻いた。
少し背伸びして、苦しくならない程度の強さで巻き、そのうえカイロも持っていた2つともポケットに入れてあげると、それを素直に見ていたコウさんが「サンキュー」と目を細めた。